床の間と教育
だいぶ前にもお話ししましたが、お歳暮やお中元と言いますとなぜか贈答のこと、と思ってしまいがちですが、これはちゃんとした歴史上の暦による行事なのです。
特にお中元は中国の暦に「三元」という習慣があり、正月15日を上元、7月15日を中元、10月15日を下元といい、たまたま日本ではこの中元の7月15日と盂蘭盆会(うらぼんえ)が重なったことから祖先の霊を供養して食べ物を送る習慣となり、さらに目上の人、そしてお世話になった人々などに感謝の気持ちを贈り、さらにご機嫌をうかがうという習慣となりました。あの「1年間ありがとうございました」というお歳暮の御礼までのちょうど中間ということもあって、半年の感謝の「お中元」の贈り物が一般化するようになったようです。
お盆は本来は7月13日からですが、日本のほとんどの農家はちょうど農繁期と重なり、1カ月遅れの8月15日前後をお盆としています。このため、今でも企業は8月の13、14、15、16日を休むのです。その間に墓参りや盆踊りなど各地でいろいろな行事が行われ、16日には盆送り火となるのです。送り火は8月13日にお迎えした精霊を浄土に送る行事で、焚(た)いた送り火の煙に乗せてお帰しするのです。そして祭壇にお供えしたものを船に乗せて川や海に流すことから、各地で灯籠(とうろう)流しや京都五山を代表する大文字焼きなどの風習が生まれたのです。
今の家で昔と変わったことは、こうした先祖を祭り敬うための仏壇や祭壇がないことです。そのことから床の間もなくなりました。マンションでは床の間はおろか、最近は和室がない家も多くなっていますが、そのため床の間を背にして座ってはいけないとか、上司や先輩を敬う上座下座の礼儀作法などを子どもたちに教えることは簡単にできません。
昔は親たちの日常の生活を見て、子ども心に「床の間は何か大切で厳粛な場所」ということを当たり前に思って育ちましたが、今の子どもには何とも不思議なことなのです。こうした“敬いの精神”を表現する躾(しつけ)の不足が、子どもたちの処世に不利となったり、人生を淡泊なものにしたりしているとも言われるのです。
現代のわが家と先祖を結ぶ尊い場である床の間や仏壇、すなわち“わが家のへそ”がないのです。そのことが、教員や大人たちには分かるともいいます。これは大変! 早速、リビングのコーナーにでも分厚い板などを置いて「置き床」にしたり、出窓を床の間や仏壇としてしつらえ、“わが家のへそ”をつくりましょう。 天野 彰(あまの・あきら)

0 件のコメント:
コメントを投稿
登録 コメントの投稿 [Atom]
<< ホーム